「耐震改修後のビジョン」に関する質問への回答(2013/12/10)

質問:「貴会の耐震改修後のビジョンについて」に対する回答  「市民の会」より (2013/12/10)

  

1.耐用年数、「二重投資」について

 市の耐用年数の考え方、ライフサイクルの考え方には疑問点・問題点があります。
 市は、「建物の使用年数は、『建築物のライフサイクルコスト』(建築保全センターの資料による)…を踏まえ65年としています」と述べており、これを根拠として、1964年に建てた現在の本庁舎を2017年に耐震改修を行った場合、その後わずか12年ほど先の2029年には新たに建替えの必要があるとしています。しかし、各地の公共施設の運用実態と照らし合わせてみると、この市の主張には明確な根拠がまったくありません。

 現に市役所より2年早く1962年に建設した鳥取県庁本庁舎は、すでに約25億円の費用で2011年に耐震改修を完了しており、建物の診断や補修を継続しながら今後50年使いたいとしています。つまり県庁本庁舎の場合には、建築後約100年間使用し得ることを前提として、現在運用されているのです。

 「建物の構造躯体は通常、維持管理が適切に講じられていれば100年以上の耐久性を期待できる」とも言われています。また、建物の耐用年数について、市整備局が根拠にしている資料を発行している建築保全センターの関係者が「65年という数字に確たる根拠はない」「実際の耐用年数は建物の状況に応じて個別に判断すべきだ」と述べています。(「耐用年数の呪縛を解け」『日経アーキテクチャー2012年2月号』を参照)

 また、市の専門家委員会の議論でも、ライフサイクルコストのとらえ方では意見がまとまっていたとは言えません。

遠藤委員「市庁舎の耐用年数でいう20年っていうのは、さっき委員長がおっしゃったように、何年使うかという考え方でないといけないと私もいけないと思います。もちろん建物ですから、いつどのようになるか分かりませんけれども、やはり考え方としては、上手に使っていけば、それは60年っていうのは単に構造計算上、日本の厳しい構造計算上、60年を目指しているけれども、実はもっともつんだというようなことが言われていますし、本当に大変難しい。
小野委員長「確かに耐用年数の65年っていうの、非常にいろいろ議論がある数字だっていうこと、よく分かりました。……いろんなファクターがあってある数字だから非常に難しい。」
小野委員長「ライフサイクルコストについて少しどっかに委託をして検討してもらうっていう話、なかなかちょっと今難しくて……」
(専門家委員会議事録より。市のHPで検索可能)

 以上の第5回専門家委員会の委員の発言に見られるように、コンサルタント業者が入らなかったこともあり、議論がまとまらず、最終的に国土交通省大臣官房官庁営繕部が監修し、一般財団法人建築保全センターが編集・発行した「建築物のライフサイクルコスト」という資料によるしかないということで決着させた経緯があります。なぜ、きちんとした建築の専門業者による検討を行わなかったのか大いに疑問です。
 なお、県内でも市庁舎を耐震改修した倉吉市は「使えるまで使う」、同じく境港市は「今後20~30年、きちんとメンテナンスすれば50年使えるかもしれない」と言っています。
読売新聞「支局長から」2011年7月5日記事より。)

 以上のことから、市の耐用年数の資料に基づく「二重投資」という指摘は必ずしも成り立たないと考えます。「二重投資論」は、「耐震改修してもいずれ新築しなければならないから二重投資になる」というものですが、いずれ新築するにしても、それまで30年とか50年もたせられるならば、その間に建設基金を積み立てていけば、合併特例債という借金に頼らず(子や孫に借金を残さず)新築できるのではないでしょうか。
 また、そもそも、この論に立つと、多くの耐震改修した公共施設は全て二重投資であるということになります。県庁第二庁舎、裁判所などは耐震補強していますし、市民会館も、多くの学校も耐震改修しています。それらは全て二重投資だというのでしょうか?

 二重投資という点では、合併時に20億円近くかけて購入し内部を改修して駅南庁舎としたのに、また新たに大きな費用のかかる新庁舎を建設することの方が二重投資に当たるのではないでしょうか?ちなみに、駅南庁舎には民間に貸しているスペースもあり、そこを庁舎として有効活用すべきだという意見もあります。

 

2.文化センター、福祉文化会館について

 文化センター、福祉文化会館という建物の今後のことまで、「市庁舎新築移転を問う市民の会」が現時点で関与すべき対象であるとは考えていません。今後、市が議会や市民の意見を聞きながら検討していけばよいことと考えます。
 というのは、市が「庁舎が7つに分散している」などと強調してきたので、もしかしたら誤解があるかもしれませんが、文化センターも福祉文化会館も全体が庁舎なのではなくその一部だけです。つまり、そこにいる数は多くない人員をどこに配置するかの問題だと思います。以下、市の資料を見たり、市整備局に聞いた範囲で付言しておきます。

 文化センターは生涯学習課が入っていて庁舎部分は130m、職員数は15人でしたが、今は生涯学習課は第二庁舎に移動しており、緑化フェアの関係の市職員が一時的に入っているとのことです。耐震化の点では、事務所部分は耐震化が既に完了しており、文化ホール部分のみ今後耐震化が必要とのことです。

 福祉文化会館は庁舎部分が576m、職員数は17人で、選挙管理委員会事務局、監査委員会事務局、男女共同参画事務局が入っています。この建物は、土地は市のものですが、建物は市と教育福祉振興会の所有であり、市はこれを解体して高齢者用住宅などへの活用を構想しているようですが、振興会との相談も今後なされるのでしょうし、議会や市民の意見も聞いて検討されるものと思います。

 ただ、私たちのこれまでの主張、考え方として、少子高齢化の進行、市の厳しい財政、他にもっと税金の使い道として優先すべきものがたくさんあることなどから、今はどんどんハコモノを新築するような時代ではないというのが共通理解されているということはお伝えしておきます。
/(広報担当 谷口隆秋)
                

 

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